中環審第1374号令和7年5月8日環境大臣浅尾慶一郎殿中央環境審議会会長大塚直(公印省略)水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて(第7次答申)平成14年8月15日付け諮問第56号により中央環境審議会に対してなされた「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて(諮問)」については、別添のとおりとすることが適当であるとの結論を得たので、答申する。水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて(第7次答申)令和7年5月中央環境審議会1.はじめに環境基本法に基づく水質汚濁に係る環境基準のうち、公共用水域の水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準の項目については、現在27項目が定められており、地下水の水質汚濁に係る環境基準の項目については、現在28項目が定められている(以下、公共用水域の水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準及び地下水の水質汚濁に係る環境基準をあわせて「水質環境基準健康項目」という)。また、人の健康の保護に関連する物質ではあるが、公共用水域及び地下水(以下、「公共用水域等」という。)における検出状況等からみて、直ちに水質環境基準健康項目とせず、引き続き公共用水域等の検出状況などの知見の集積に努めるべきものについては、「要監視項目」として位置づけており、現在、要監視項目については公共用水域において27項目、地下水において25項目の監視等が行われている。「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて(第5次答申)(令和2年5月27日)」(以下、「第5次答申」という。)において、ペルフルオロオクタンスルホン酸(以下、「PFOS」という。)及びペルフルオロオクタン酸(以下、「PFOA」という。)を要監視項目に位置づけるとともに、「現時点で毒性学的に明確な基準値及び指針値の設定は困難であるものの、各国・各機関が行った評価の中で妥当と考えられるものを参考に指針値(暫定)とすることが適当である」とされ、当時の知見を基に、PFOS及びPFOAの合計値として50ng/Lが設定された。今般、令和6年6月に内閣府食品安全委員会が「有機フッ素化合物(PFAS)に係る食品健康影響評価」(以下、「評価書」という。)を取りまとめたこと等を踏まえ、公共用水域等におけるPFOS及びPFOAの指針値(暫定)の取扱いについて検討し、結果を取りまとめた。12.検討事項等前述のとおり、令和2年にPFOS及びPFOAの指針値(暫定)を設定した際には、毒性学的に明確な基準値及び指針値の設定は困難であったが、令和6年6月に、内閣府食品安全委員会の評価書において、耐容一日摂取量(以下「TDI」という。)として、PFOSは20ng/kg体重/日(2×10-5mg/kg体重/日)、PFOAは20ng/kg体重/日(2×10-5mg/kg体重/日)と設定することが妥当と判断された。このような状況を踏まえて、PFOS及びPFOAの指針値(暫定)の取扱いについて検討を行った。なお、検討にあたっては、第5次答申の「2.(2)2)水質環境基準健康項目基準値及び要監視項目指針値の設定の考え方」に記載された考え方を基本とした。3.検討結果現在設定されているPFOS及びPFOAの指針値(暫定)については、内閣府食品安全委員会の評価書において、PFOS及びPFOAに関するTDIを設定したことを踏まえると、毒性学的に明確な基準値又は指針値の設定が可能と判断されることから、「指針値(暫定)」を「指針値」とし、また、指針値の導出においては、寄与率・体重・1日あたりの摂取量等については基本的な考え方を適用した上で、内閣府食品安全委員会の食品健康影響評価結果を踏まえると、PFOS、PFOAそれぞれ50ng/Lとなるところ、より安全側の観点からPFOSとPFOAの合計値として50ng/Lとすることが適当である。1)指針値の導出根拠内閣府食品安全委員会の評価書において、食品健康影響の指標値の算出の根拠として、PFOSについては、ラット2世代生殖・発生毒性試験(Luebkeretal.2005a)でみられた児動物における体重増加抑制を、PFOAについては、マウス生殖・発生毒性試験(Lauetal.2006)でみられた胎児の前肢及び後肢の近位指節骨の骨化部位数の減少、雄の児動物の性成熟促進をそれぞれ採用した。また、血中濃度から摂取量への換算のための独自の用量推計モデルの構築には期間を要すること等から、海外評価機関で採用された用量推計モデル等を確認した上で、その計算結果を適用し、TDIとしてPFOSは20ng/kg体重/日(2×10-5mg/kg体重/日)、PFOAは20ng/kg体重/日(2×10-5mg/kg体重/日)と設定することが妥当と判断された。この結果を踏まえて、指針値の導出においては、水の飲用に係る寄与率を10%、体重を50kg、1日あたりの摂取量を2Lとし、内閣府食品安全委員会の評価書で示されたTDIを適用すると、PFOS、PFOAそれぞれ50ng/Lとなるところ、評価書ではPFOS、PFOAともに生殖発生への影響をエンドポイントとしていること、同時に環境中で検出されている例もあることを考慮し、より安全側の観点からPFOSとPFOAの合計値として50ng/Lとする。24.おわりに内閣府食品安全委員会の評価書の結果を踏まえたPFOS及びPFOAの指針値(暫定)の取扱いについて、以上のとおり結論を得たところである。なお、評価書の中では「評価に使用できる情報が現時点では不十分であり、今後の知見の集積により、新たに検討が必要となる可能性はあり得る。」としていることから、引き続き国内外における毒性評価や目標値等の今後の検討状況等について注視する必要があり、新たな知見が得られた場合には、必要に応じて見直しを検討することとする。PFOS及びPFOAは、引き続き、環境中で検出される状況が認められるものの、国民の健康リスクの低減の観点からは、飲み水の安全性を確保するための水道水源から蛇口までの一体的なリスク管理を図ることが重要であり、水道水質基準への位置づけとともに、水道水源等での重点的な環境モニタリングや飲用井戸等での検査促進、指針値等を超過した場合の飲用摂取防止等の取組を講じていくことが適当である。その上で、製造・輸入等は既に原則禁止されているものの、主に過去様々な形で排出されたPFOS・PFOAが環境中等に残存している状況であること、環境中で指針値を超過した地域における汚染の態様が様々であることを踏まえ、①環境中への流出や環境中での拡散・分解等に係る知見(分析法に係る知見を含む)の収集や、効果的・効率的な対策技術に係る知見の収集を進めていく必要があること、②これらの成果を地方自治体等に提供しつつ、汚染の態様に応じた対策の効果や実行可能性や、健康リスクの低減に効果的な対策のあり方に関する検討を進める必要があること、③水質汚染による食品への影響(水・土壌から農水産物への移行特性、食品中のPFOS等の含有実態等)に関する知見についても把握していく必要があることから、当面の間、環境中での検出状況のほか、様々な知見の集積を図りつつ、引き続き、「検討に当たっての基本的考え方」(第5次答申2.(2))の適用の在り方について検討することとする。34PFOS及びPFOAに係る基礎的情報付表1PFOS及びPFOAの物理化学的性状名称ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)ペルフルオロオクタン酸(PFOA)構造式CASNo.1763-23-1(酸)29081-56-9(アンモニウム塩)70225-14-8(ジエタノールアミン(DEA)塩)2795-39-3(カリウム塩)29457-72-5(リチウム塩)335-67-1(酸)3825-26-1(アンモニウム塩)335-95-5(ナトリウム塩)2395-00-8(カリウム塩)335-93-3(銀塩)組成式C8F17O3SX(XはH,Kなど)C8F15O2X(XはH,NH4など)分子量500.1(酸)414.1(酸)物理的性状液状(酸)1)、白色粉末(カリウム塩)白色粉末(酸、アンモニウム塩)1)融点>400℃(カリウム塩)54.3℃(酸)157~165℃(アンモニウム塩、165℃で20%が分解)沸点249℃(酸)1)188℃(酸、760mmHg)189℃(酸、736mmHg)192℃(酸)1)比重、密度~0.6(カリウム塩)~1.1(リチウム塩)~1.1(アンモニウム塩)~1.1(ジエタノールアミン塩)1.792g/cm3(酸、20℃)0.6~0.7g/cm3(アンモニウム塩、かさ密度)蒸気圧0.85Pa(酸、25℃、MPBPWINにより算出)1.9×10-9Pa(カリウム塩、25℃、MPBPWINにより算出)4.2Pa(酸、25℃、外挿値)3Pa(酸、20℃、外挿値)8×10⁻³Pa(アンモニウム塩、20℃、外挿値)オクタノール/水分配係数(logPow)4.49、5.43(酸、推定値)1)4.81、5.11(酸、推定値)1)オクタノール・水混合物中に複数の層を形成するため、実測不可(酸)2)解離定数(pKa)0.14(酸、推定値)2)2.5、2.8(酸)水溶解度519mg/L(カリウム塩、20±0.5℃)680mg/L(カリウム塩、24~25℃)570mg/L(カリウム塩)370mg/L(カリウム塩、淡水)12.4mg/L(カリウム塩、未ろ過海水)25mg/L(カリウム塩、ろ過海水)12.4mg/L(カリウム塩、天然海水、22~23℃)20.0mg/L(カリウム塩、3.5%NaCl溶液、22~24℃)3.3×10³mg/L(酸、25℃)1)9.5×10³mg/L(酸、25℃)別添5土壌吸着性土壌吸着定数(Kd):18.3(カリウム塩、粘土)9.72(カリウム塩、ClayLoam)35.3(カリウム塩、SandyLoam)7.42(カリウム塩、河川底質)土壌吸着定数(Koc):704(カリウム塩、粘土)374(カリウム塩、ClayLoam)1,260(カリウム塩、SandyLoam)571(カリウム塩、河川底質)土壌吸着定数(Kd):4.25~8.86(アンモニウム塩、土壌(Drummer))0.41~0.83(アンモニウム塩、土壌(Hidalgo))1.19~2.84(アンモニウム塩、土壌(CapeFear))1.82~4.26(アンモニウム塩、土壌(KeyPort))土壌吸着定数(Koc):73.8~111(アンモニウム塩、土壌(Drummer))53.0~108(アンモニウム塩、土壌(Hidalgo))95.9~229(アンモニウム塩、土壌(CapeFear))48.9~115(アンモニウム塩、土壌(KeyPort))【出典】一部を除き、PFOSは化学物質の環境リスク評価(第6巻)(環境省)、PFOAは化学物質の環境リスク評価(第9巻)(環境省)による。一部の出典は以下のとおり。1)評価書有機フッ素化合物(PFAS)食品安全委員会(令和6年(2024年)6月)2)ATSDR;ToxicologicalProfileforPerfluoralkyls.Atlanta,GA:AgencyforToxicSubstancesandDiseaseRegistry,USPublicHealthService(2020).Availablefrom,asofMay,2021(https://wwwn.cdc.gov/TSP/ToxProfiles/ToxProfiles.aspx?id=1117&tid=237)付表2PFOS及びPFOAの分解性名称PFOSPFOA生分解性・活性汚泥、底質培養物、土壌培養物中での好気的生分解試験及び下水汚泥での嫌気的生分解試験では、分解の兆候はまったく示されなかった。・既存化学物質安全性点検(OECDTG301C)において、「難分解性」判定(BODによる分解度:5%)・文献的には、分解半減期が汚泥で2.5ヶ月より長い、土壌/汚泥で259日より長いという報告がある。光分解性・直接又は間接光分解の証拠は見られなかった(EPAOPPTSプロトコル835.5270)。・25℃における間接光分解の半減期は3.7年以上と算出された。・水中においては、直接的な光分解はしない。・間接的な光分解を受ける水生環境では、半減期は349日より長いと推定された。加水分解性・分解はまったく示されなかった(EPAOPPTSプロトコル835.2210)・半減期は41年以上とされた。・文献的には、分解半減期が約235年と報告されている。平成21年度第1回薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会化学物質審議会第1回安全対策部会第90回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会参考資料4ペルフルオロ(オクタン-1-スルホン酸)(別名PFOS)又はその塩など12物質の分解性、蓄積性及び人への長期毒性等について別添令和5年度第9回薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会化学物質調査会令和5年度化学物質審議会第3回安全対策部会第241回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会【第一部】参考資料11PFOA若しくはその異性体又はこれらの塩及びPFOA関連物質等の有害性の概要
水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて(第7次答申)<令和7年5月>
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